【FF14】初めての頼みごと【ショートストーリー】

これはぷらいべったーに公開していたFF14の二次創作小説に加筆修正を行ったものです。
そういったものが苦手な方はこのままブラウザバックしてください。
興味があるという方は続きをどうぞ……の前に、追加の注意書きです。

時期:パッチ2.3~パッチ2.4の間ぐらい
独自設定、独自解釈有り。恋人未満オルシュファンx光セン♀
大丈夫そうな方のみどうぞ

 

「むぅ……やっぱり、これ以上に関しては別系統の魔法理論がほしいわね」
 独自に研究しているエーテル学、その内容を紙に書きつける手を止めて、私は溜息を吐いた。
 白魔法、黒魔法、軍学魔法、召喚魔法、それらから独自に自分の体質や能力についての研究考察を続けているが、芳しい成果は上がらない。
 別系統の魔法理論か、あるいは全く異なった視点からのアプローチが必要になる、そう結論漬けて私は筆を置いた。
 小耳に挟んだ学術都市……シャーレアンにでも行くことができれば、更に考察もすすめる材料を手に入れる事もできるのだろうが、あいにくとガレマール帝国がアラミゴを侵略した時期に大撤収と称して本国へ帰還してしまい、今はほぼ連絡が途絶えている状態だという。
「どうしたものかな……確か、低地ドラヴァニアのほうなのよね……」
 低地ドラヴァニア、イシュガルドの北西に位置する……現在足を踏み込むことすら出来ぬ閉ざされ隔絶された土地。
 冒険者としても、興味を惹かれる場所であり何度か想いを馳せることもあった。
 一体、どんな土地なのだろうか……どんなものがあるのだろうか、行けたとしたら……一体どんな冒険が待っているだろうか。
「イシュガルド……か」
 ふと、クルザスに作られた拠点ドラゴンヘッドに居る、ちょっと変わった友人のことを思い出し、頼ってみようかと、自分にしては珍しい事を思った。

「おお! 久しぶりではないか、また一段と逞しくなったようだな。赤と黒のコートをはためかせる姿……イイ!」
「あはは……オルシュファンも変わりないみたいで」
 ドラゴンヘッドの司令室を尋ねると、いつもと変わらない様子で──多分新調したコートをよく似合っているぞというのを、彼なりに褒めているのだろう──迎え入れてくれた。
 ガッツポーズを取るヤエルとコランティオ、その様子からどうせ休憩も取らずに黙々と仕事を続けていて部下が休憩を取りづらいんだろうなぁ、なんてことが頭に浮かんだ。
 休息の大切さを人に言う割に、自分はその辺がおろそかなのだ、この騎士は。
 それだけ強靭な、逞しい肉体を持っているということかもしれないけど。

 結局のところ私とオルシュファンは、冒険者殿がせっかく訪ねてきてくれたのですからと押し通すヤエルとコランティオによって彼の私室へと押し込まれた。
 温めたヤクの乳をコップに二つ用意して、だ。
 苦労してるんだろうなぁ。
 そんなことを考えながら、何を話そうかと考えていたら彼の方から話を始めてくれた。
「レブナンツトールの開拓は進んでいるか?」
「ええ、おかげ様で」
 一番立派な建物はロウェナ御殿だけどね、という言葉を飲み込みつつちょっとした近況報告をする。
 寂れていた場所は今では立派な一拠点として通用するだろう。
 といっても、先の大氷壁で氷の巫女の後ろ姿を見て、それを報告した時からそれほど時間は経っていないため、すぐに話す内容も尽きてしまった。
 手渡されたヤクの乳に口をつけつつ、どう話を切り出したものかと考えていたら、ふらっと眠気にさらわれかけた。
 最近研究のために徹夜をしていた影響が、暖められたミルクの所為で出てきてしまったのかもしれない。
 そして、それを見落とすような彼ではないのだ。
「眠いのなら床を用意するぞ」
「いや、流石にそこまでは必要ないわよ」
「そうか? 必要とあればいつでも言うのだぞ、キャンプ・ドラゴンヘッドはいつでもお前を迎え入れよう」
「あはは、ありがとう」
「それで、今日はどのような要件で訪ねてきたのだ?」
 不意に切りだされて少々面食らう。
 確かに要件があるときぐらいしか足を運んでいないかも知れないと思い至る。
 友としては、やはり素っ気ないのだろうか?
 いや、それ以前にこの前の開拓団の件でここを訪れるまで、友という言葉すら社交辞令だろうと流していたのだから、それも当たり前か。
「要件も無く訪ねてきてくれたというのなら、それは友として喜ばしい事だがな」
「まぁ、要件というか……いつもの依頼とかじゃなくて、個人的なことなんだけど」
「ほう、それは珍しいな。お前はいつも誰かの依頼でばかり動いているものと思っていたが」
 酷い言われようだが一言も反論できないなぁと苦笑する。
 だがオルシュファンもそんなことはわかっていたのか、私の反応を見て小さく笑ったのだった。
「他ならぬ、友からの初めての頼みごと、無下にすることなどどうしてできようか。このオルシュファンを遠慮無く頼るとイイ」
 そんな彼の言葉を聞きながら、そういえば人を頼るのは初めてだったかもしれないなと……そんなことを思った。

 私の頼みごとを聞いたオルシュファンは、次第にその表情を難しい物へと変える。
 それだけで、私の頼みごとがなかなか難しいものであることは容易に想像がついた。
「ふむ、つまりイシュガルドで書かれたエーテル学の書やシャーレアン式の占星術、占星魔法についての書が欲しいということか」
「うん。ちょっと私の個人的な調べ物が行き詰まってて、今のところ思いつくものがそれぐらいしかないの。……手に入るかな?」
「なかなか難しい頼みごとだな、イシュガルドではすでにシャーレアン式の占星魔法は廃れてしまっている。竜の咆哮を読み取るためのイシュガルド式占星術だけが発展してしまった弊害というやつでな……。だが、古い書なら残っているものがあるかもしれん。本家と聖ガンリオル占星院に問い合わせてみよう」
 難しいと、そう言いながらもあっさり承諾してくれるオルシュファンに、思わず呆気にとられて一瞬言葉に詰まってしまった。
 本当に、難しいと思っているのだろうか。
「あ、ありがとう……でも、大丈夫? オルシュファンの立場が悪くなったりは……」
「心配してくれているのだな、だがこの程度ならば大丈夫だ」
 そう言って力強く笑い、私の頭を撫でるオルシュファンに、自然と顔がほころぶのを感じた。
 

 一週間ほどした頃、モグレターが届いた。
 差出人はオルシュファン・グレイストーン。
 三冊の本と短い手紙が同封されていた。
 いそいそと書斎に戻り手紙の封を切る。
 貴族らしい流麗な、けれど力強い文字で、友への挨拶と近況が綴られていた。
 目を通し終え、書斎机に添えつけてある鍵付きの引き出しに手紙を仕舞いこむと、返事を書くべくレターセットと羽ペンを取り出す。
 あいにくと、貴族の文通の礼儀だとか書き出し方の教養はないため、どう書き出すか迷いに迷って、簡素な一文だけにした。

 ”近々お礼に伺います”

 さて、お礼には何がふさわしいだろうかと、探してもらった本をそっちのけで考えを巡らせるのだった。

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